日本文学者
お酒を飲んで「気持ちがいい」と思った瞬間というのは、恐らく自分の体調ですとか、一緒にいる仲間たちとの関係とか、いろんなことが整っている証だと思うんですね。お酒を飲んで最初の1杯、誰でも普通に生理的な作用として酔っていって、ほろ酔いを感じると思うんですけれども、僕は逆にその気持ちが、そのときの自分の状況を教えてくれるバロメーターみたいなものだと思っているんです。
そう考えると、お酒が人を幸せにするかどうかは、そのときの体調にもよると思うし、僕にとっては、誰と一緒に飲んでいるのかっていうことが一番大きな違いかなと思います。
初めて会った人たちと一緒に飲んだお酒のときめきのようなものも、僕は幸福だと思いますし、久しぶりに会って「ちょっと美味しいものでも食べながら飲もう」というときも、また別の味わい、別の幸福感というものがあります。いろんな幸福のグラデーションというか、色合いというか、そういうものをお酒が上手に浮き上がらせてくれるものだなというふうに思います。
お酒は薬にもなり、毒にもなるわけですから、気を付けないといけないということは大前提として、好きなお酒を好きな人たちと一緒に、私の場合は食べ物と合わせていただく、それが僕にとって、自分を明日へと進めていく、明日へと背中を押してくれる大事な力になっているような気がします。
日本文学者
ロバート キャンベル さん(日本文学者)
ニューヨーク市生まれ。早稲田大学特命教授。早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)顧問。せんだいメディアテーク館長。東北大学特任教授。東京大学名誉教授。近世・近代日本文学が専門で、とくに19世紀(江戸後期~明治前半)の漢文学と、それに繋がる文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せている。著書に、茶の湯の名品を実見し、自らの見識や発見、感慨を通して日本文化を読み解く『よむうつわ 上/下 茶の湯の名品から手ほどく日本の文化』(淡交社)がある。
Photo: Ryo Shirai Location: ロバート キャンベルさんのご自宅
